乗り越え続けたロッククライマー

本ページはプロモーションが含まれています







毎日ね。
朝起きると、目の前に
反り立ってんの。

その壁は、20メートルしかない時もあれば、
50メートルある時もあって、日によってまちまち。

ま、どれくらいの高さだったのか分かるのは、
大概、その日が終わってからなんだけど。

ふうん。


でも、
その壁を乗り越えないと、
夜を迎えて眠りに就くことができないわけ。
10メートルぽっち登るのでも、かなり大変なの。

苦しいけど、仕方ないんだ。

なるほどね。
おまえが身に着けてる色んなもの、
それ全部、壁を登りやすくするためのものなんだな。


そうそう。

これがヘルメット。
こっちがシューズ。
それからハーネスに、
カラビナ。
あとこれが、ロープと
ショルダーバッグ。

さすがに色々持ってるな。

その重苦しい装備ひとつひとつを手に入れるのにも、  
ずいぶん苦労したんだろう。

そりゃね。

でも、これがないと壁を登れないわけだし、
絶対必要なものだからさ。

















数十年後









やぁ、やっと終わったな。
おまえの毎日壁を乗り越え続けた日々が。


ああ、
正直、何度死ぬかと思ったか分からないくらい、
過酷で異常な日々だったよ。

でも、やっと自由に
過ごせるんだなぁ。


じゃあ、まずその重苦しい装備、 全部外しちゃえよ。

そんなんじゃリラックスして、話もできないぜ。


わかった……あれ?





どうした?


おかしいな、取れないぞ?

あれ? 
おかしいな?


何やってんだよ、それ着けてても、もうこれから使う機会ないじゃないか。

さっさと取っちまえって。








そう言われても、
これが身体にこびりついていて、無理みたい。






……


……





……じゃあさ、
気分転換に、何か話でもしようぜ!


おう、了解。

あ、そうそう、オレが登った一番高い壁は、
150メートルくらいあってさ。
それを乗り越えた日は、もう身体中痛くて頭もガンガン鳴ってて、
特に足を滑らせた時に、右足を挫いちゃったのが…… 

ちょ、
おまえ、もう壁の話はいいだろ?

せっかく必要なくなったんだし、ほら、 他の話題をさ、
楽しもうぜ?


ああ、ほんとだな……


あ、そうだ!

ボルダリングのグレードを上げた時にさ、 クラッシュパッド敷いてなくて、 そのまま落下して大怪我を……

……おいおい、

だからなんで壁登りの話をするんだよ。

他の話をしようぜ。

何でもいいからさ、
広い世の中、
話題はいくらでもあるだろ?









そう言われても、
これが頭に染みついていて、無理みたい。







SNSフォローボタン

フォローする

シェアする




error: Content is protected !!