やりたいことをやる人生か。安定を優先させた人生か。~絶望の道~

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『登山者に非ざるもの、生きるべからず。』






















オレの目の前に、
2つの登山道がある。

どちらの道も、行く先には山々が連なっていて、
登山者でなければ乗り越えて行くことができない。

1日に、1つずつ山を登り、
山の頂上のリンゴの樹を目指す。

樹からリンゴを採って、
山を下り、
山間にテントを張って、
リンゴを食べて、
寝床に着く。

これが1日のサイクルだろ?

そうだ。
リンゴを食べなければ、
死んでしまうからな。

そのサイクルはどちらの道でも同じだ。

じゃあ、
この2つの道。

違いは何だ?

見ての通り、
違いは山の高さにある。

1つめの道の先にある
山々は、高く険しい。
吹く風は強く、山肌は粗い。
滑り落ちて大怪我をすることもあれば、
吹き飛ばされてボロボロになることもある。
もちろん、そのまま死んでしまうことも有り得る。

そして、頂上のリンゴを採って、山を下りた時には、
どっぷり日が暮れている。
後はリンゴを食って、眠るだけ。それ以外、ほとんど何もできない。
すぐに次の日が来て、また次の険しい山に登り始める必要がある。

ふむ。
1つめの道を歩むことは、
命懸けで毎日山を登り続けるだけの人生、になるわけだな。

で、2つめの道は?

2つめの道の先にある山々は、低くなだらかだ。

ゆったりと考え事をしながら、山を登ることも出来る。
頂上のリンゴを手に入れて、山を下りて来ても、まだ外は明るい。
自分のやりたいことができる時間が、十分に持てる。

しかし、こちらの道は、
途中で山自体が無くなる確率が、1の道に比べて、非常に高い。

山自体が、無くなるんだ。

山が無くなれば、頂上のリンゴの樹も無くなる。
リンゴの樹が無くなれば、リンゴが食べられなくなる。

そうなったら、
死んでしまう。

その時になって、1つめの道に戻ろうとしても、
もう手遅れだ。

どちらも、一長一短だな。


伴外。
オレには、
やりたいことがある。
したいことがある。
成し遂げたいことがある。
山登りだけで一生を終えるのは、ごめんだよ。

だけど、おかしいぜ?
おまえが今まで歩いてきたのは、険しい山だらけの1の道じゃないか。

そうだ。
オレは、
自分のやりたいことよりも、
確実にリンゴが手に入る道を選んで歩いてきた。

それでもオレは今、
迷い続けている。

このまま、1の道を歩み続けて良いのか。
やりたいことは、何も出来ない。何も出来ていない。
毎日、山を登ることだけで必死だったからだ。

それが嫌で、2の道を歩めば、やりたいことは出来るかもしれない。
だけど今度は、いつ山が無くなるのか、という不安に苛まれる。

山が無くなれば、
リンゴが無くなり、
リンゴが無くなれば、
死ぬしかない。

そうなったら、
もう、やりたいことどころではない。

オレはどうも不器用でね。
他の奴らのように、山を登ること、それ自体に価値を見出せないんだ。

他の奴らはご立派さ。

山をどう登ろうか、
その為の装備品をどう身に付けようか、
頂上から見渡した展望はどんなものだろうか、と
そんなことに夢中になれる。価値を見出せる。

だがオレは、
まるっきり興味がないんだ。
まるっきり、興味がない。
興味があるのは、山登りとは全く別のことなんだ。

でもなぁ、
それをする為には、
リンゴが食えなくなるかもしれない、2の道を歩まなきゃいけない。

オレは、それを選択するのが、怖いんだ。

どうしようもなく、
怖いんだよ。

だからそこまでボロボロになっても、1の道にしがみついているわけか。

それも、
おまえの選択だよな。
選ばされたとはいえ、
それも選択だ。

だが、そのまま死んだら、
ただの阿呆だ。



やりたいことを持っている奴は、誰でもこの岐路にぶち当たる。

そこで皆、どちらかを選んで、選ばされて、歩いて行く。

どちらが正解か、
それは分からない。

自分が選んだ方が正解か、と言えば、恐らくそうでもない。


自分が正解だと思えた方が、正解なんだ。



オレは、どちらを選んでも正解だと思えないまま、後悔しながら生きて、いま、死にかけている。




分かるか、伴外。





これは、
1も2も、
どちらも、
絶望の道なんだよ。



だが、それでも、
どちらかを選ぶしかない。

どちらかを、
選ぶしかないんだ。




どちらの道も
絶望の道だったとしても……。




それでもおまえは、
どちらかを選ぶ
自由を持っている。












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