今日も誰かが地獄を生きている

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なぁ、伴外。
オレみたいな奴でも、
人の役に立てることってあるのかな。

あるよ。
10年間ニートで
何の仕事も覚えられない社会的クズのおまえでも、
できることはある。

本当か。
是非それを
オレにやらせてくれないか。
一生に一度くらい
人のためになって
死にたいんだよ。




OK。
じゃあ、これを見ろ。

これはなんだ?
いじめ相談掲示板?

そう。
今、いじめは社会問題さ。
子供社会にある
地獄のひとつだよ。
自殺者もしょっちゅう出ている。

なるほど、
この掲示板で
相談に乗ってあげて、
いじめられている子を
救うんだな。

違うね。
おまえは相談するんじゃない。

身体を張るんだ。

相談しても、いじめを克服できるかどうかは、
結局その子次第だろ?

まぁ、そうだよな。
掲示板で相談に乗る人は、
所詮、励ますか叱りつけるかしかできない。

だな。
実際相談を見ても、
『辛かったね、でも死ぬなんて言わないで』
か、
『自分に負けず立ち向かえ』
か、の2系統の返答しかない。

そのいずれかで
救われる子はいいさ。
でも救われない子もいる。

そーいう子を、
おまえが救ってやるのさ。

どうやって?

簡単だよ。

いじめられっ子ではなく、
いじめっ子に話を付けに行くんだ。

な、なんだと!?





じゃあ、
この子にしてみよう。
メメ子ちゃん、中学2年生。
学校でクラスメイト4人にいじめられて、
本気で死を考えている。

具体的にどうするんだ?

まず、普通に相談に乗って、仲良くなろう。
だが、彼女へのいじめは止まらないだろう。

そこで、メールアドレスを交換してコンタクトを図る。
自分がいじめっ子に直接話を付けに言ってやる、ってね。

早い話がシメに行くんだよ。
おまえがな。

……な、なんだって?

メメ子は
いじめっ子には勝てない。
それほど、
いじめっ子といじめられっ子の力の差は激しい。
学校という閉塞された状況下なら尚のことだ。





でも、
大人のおまえなら勝てる。

な?

は???

相手は中学2年の女だ。
怖くはないだろ。

いや、
怖いとかいう問題じゃなくって、オレみたいな大人が出ていったら、通報されかねんぞ?
そのいじめっ子は
親に変なオッサンに絡まれた、って言うだろうし。
したら、逮捕されちまう。

おまえは、
メメ子の血縁関係者を名乗るんだ。
兄でも親戚でもなんでもいいさ。

そんなことをしたら、
メメ子ちゃんはもっといじめられないか?

いじめられたら、
またおまえに
メールで連絡させる。
おまえは、また脅しに行く。

いじめっ子も
そんなわけわからん護衛が付いている子を
いじめようとは思わんよ。

ちょっとまて、
そんなハイリスクなことできるか!

だいたい、
メメ子ちゃんがオレを信頼してくれるわけないだろ?

信頼?
この子は自殺しようとしている段階だぞ。
日々絶望の毎日だ。
本気で自殺するくらいなら、藁にもすがるさ。

それに、ハイリスクだと?
人を本気で助けたいなら、
ハイリスクなのは当たり前だ。

それとも、
掲示板の相談者のように、
自分には
全くリスクのない状態で、
画面の向こうから
いじめられている子の力になろうとするなら、
それでもいいがね。

……





それからヒヨコスは、
メメ子ちゃんと掲示板にて仲良くなり、
折を見てメール交換を持ちかけた。

その後、彼女の住んでいる地に赴き、彼女と直接会い、
自分の兄を名乗らせてもらうことの許しを得た。



その後ヒヨコスは、
いじめの主犯格である
A子が一人になった時を狙って接触を図った。
そして、

『自分はメメ子の兄だが、
妹がキミにいじめられて死のうとしているので、
いじめを止めてほしい、
もし止めない場合は、
メメ子に報告させ、また忠告にくる』

と伝えた。



数日後、メメ子から連絡があった。
ヒヨコスが接触を図ったことが、
いじめている4人全員ほか、
無関係のクラスメイトにまで伝わり、
そのことで更にいじめを受けたという。

A子から兄には言うなと口止めされたが、
メメ子は事前約束を守ってヒヨコスに報告してきた。

ヒヨコスは再度A子に接触を試みた。







ヒヨコスが警察に連れて行かれた。

A子が親に、いじめの部分を上手く隠した上で、
メメ子と脅迫してきたメメ子兄のことを告発したのだ。

親は怒り、メメ子宅に向かった。
そして、メメ子に兄がいないことが判明。

メメ子は自分の親からきつく責められ、
ついにヒヨコスとの関係をすべて明かした。
メメ子親はすぐさま警察に通報。

しかし同時に娘のいじめも明らかになり、
互いの親同士で話し合いの場が持たれた。


ヒヨコスは事情聴取だけで解放された。
だが、今後メメ子及びA子さんに一切近づかないよう警察から念を押された。





おつかれさん。
さて、もう一度A子に接触するぞ。

えっ!? 
これで終わりじゃないのか?

これ以上やったら、
マジ逮捕される……。

おまえが逮捕されるかどうかは、問題じゃない。
いじめが終わるかどうか、
それのみが問題だ。
親同士が話し合って
いじめが終わるか?

終わらないね。

終わらせるには、
A子にメメ子をいじめたら、
おまえが出てくる、
という公式を覚えさせなきゃいけない。

今も、
メメ子はいじめられている。
なら、
おまえは出ていくしかない。

今やめたら一番最悪だぞ。

……わ、わかった。




ヒヨコスは再びA子に接触を図った。
メメ子をいじめれば、
どれだけ口止めしようと彼女は自分に報告すること。
そして、報告されれば、自分は必ず現れるということ。
何度も念を押してA子に告げた。

しかし、A子は終始逃げようとしていたため、
ヒヨコスはA子を押さえつけて
話すという形を取らざるを得なかった。

その経緯をA子は親に報告。
親は警察に通報。






婦女暴行未遂の容疑で
ヒヨコスは警察に逮捕された。







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