高みを目指すもの

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伴外。

オレはこれから、
高みを目指すよ。

……高み?

おまえの言う高みって、
世間では、
そう呼ばれてないよな。

っていうか、
それを高みなんて呼ぶやつ、
初めて見たよ。

オレにとっては、
紛れもなく高みなんだよ。

実際、この頂に立つために、どれほどのものを犠牲にしなくちゃいけないのか、想像もつかないくらいだ。

そうして
自分の中の色んなものを
犠牲にして、
おまえは
高みを目指すのか。

そう、目指す……

いいや、目指さなければならないんだ。




【数年後】



見てくれ、今のオレを。

少しだけ、
ほんの少しだけ、高みに近づくことができたぞ。

……もの凄い変わり様だな。

そこまでの変化を自分自身に施して、まだ少しだけしか、高みには近づけていないのか。

ああ、そうだ。
高みへと昇る道程は厳しい。

本当に、厳しいんだ。

だが、
途中でやめることなど、
できないんだよ。




【十数年後】



まるで別人だな、弱者川。
今のおまえを見ていると、
高みを目指すと言った時のおまえが、
ありありと思い出されるね。

そう?

オレには、もうあの時のオレを思い出すことなんて、
到底できない。

高みへと昇り続けた代償が、
オレ自身の魂だったからだ。

今のオレは、
完全なる抜け殻。

だが、あの時よりも、
遙かに高みに近い位置にいる。

それでも、
まだ高みには届いてない。

虚しいな、弱者川。

おまえが自分の全存在をなげうってまで欲した、

高み……

その高みが、
世の中でなんという
名前が付けられているか。

それを思うだけで、
おまえが哀れでならんね。

後悔はしていない。

後悔するような覚悟で、
オレはこの高みを目指したわけじゃない。




もう少し、
もう少しなんだ……








もう少しで、
オレは、













人並みになれる。




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