世界一の精神科医

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世界でいちばん腕の立つ
精神科医、
知っているかい?

悪いけど、調べたことないから知らないね。
そういうのって調べなきゃ、分からないことだし。

……あんまり興味もないし。

調べる必要なんてないぞ。
精神科医ってさ、
つまりは何する人よ?

そりゃ、あれだろ。
人の精神状態を治療する人だろ?

うんうん。
じゃあ、世界一の精神科医って、何人いる?

何人もクソも、
ひとりに決まってるだろ。
だって、世界一じゃん? 
2人いたらおかしいだろ。

1人? 2人? 
いや、違うね。

世界一の精神科医は、
この国だけでも
数千万人以上いるよ。

なんじゃそらあ。

簡単なことさ、
例えば、おまえも世界一の精神科医なわけだし、
オレだってそう。

道行くあの人も、その人も、ちょっと戻ってこの人も、
世界一の精神科医だろう。

さっぱり意味がわからんな。
じゃあ道行くその人は、
大病院の有名なお医者様よりも、ずっと上手に心を治してくれるの?

ずっと上手に、
どころじゃない。

おまえが言う、大病院に勤める腕のいい精神科医が、長い長い時間をかけて、患者にヒアリングや投薬治療をするよな?

それだけやって、ようやく
症状が改善に向かう。

でもな、オレの言う、
道行くそこらの精神科医は、
ほんの数秒でそのくらいやってのけるよ。
比べるなら、
象と蟻、月と鼈。

じゃあ、おまえ、
あの人に治してもらってこいよ?
鬱でもなんでも、
一発なんだろ?

いや、あの人では無理だ。

おまえ、おまえは……!

落ち着け、伴外。
オレは嘘は言ってない。

あの人は、オレにとっての世界一の精神科医じゃないだけで、別の誰かにとっては、世界一の精神科医なはずだ。







……そういう、
ことね。



誰もが、誰かにとっては、
世界一の精神科医に成り得るのさ。

例えば、夫と妻。
例えば、親と子。
例えば、彼氏と彼女。
例えば、上司と部下。






不思議なもんだよな、伴外。

どんなに高名な名医が、どんなに素晴らしい治療を施したところで、その人にとって、良くも悪くも強い影響力がある人の一声に、てんで適わない。

人間関係上、誰もが誰かにとって、 世界一の精神科医になる可能性を秘めているわけだな。

そうそう。
ちゃんと自覚しろよ、
ってこと。

あんたは、ある人にとって、
世界一の精神科医になっちゃってるんだからさ。




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