悪の製薬
~製薬業界と新薬開発が
わたしたちにしていること~
は製薬業界の現実を知るために読んだ二冊目の本です。
(ちょっとアップ上の手違いで記事が下の方になってますが^^;)
巨大企業が裏で
腐れ銭ゲバみたいなことやってても
私は何一つ驚かない。巨大企業は公明正大な存在?
違うでしょう。真逆でしょう。巨大企業こそまさに
その銭ゲバ戦争を
勝ち抜き生き残ってきた
歴戦の銭ゲバじゃないですか😊#やっと一冊読めた笑 https://t.co/TLy663Gal6— くろやぎ (@semirita1000) July 6, 2021
以前紹介した本とは違う観点から
製薬業界の闇を見ることができます。
著者も別の人ですし、いわゆる属性も異なる部分が多いです。ベン・ゴールドエイカー。イギリスの医師であり研究者。ジャーナリスト。専門は「政治家、製薬会社、医師による科学の利用と悪用」です。
筆者が見てきた医療業界の現状
2015年時のものですが、2005年時の本とほぼ変わってない所からして、今(2021年時)も変わってないでしょう(読み終えた今、違う国の違う人物によって書かれたものであるにも関わらず、共通点が多いです)。
というのが、この本で著者が訴えたいことで(ね? 多いでしょう共通点(てゆか内容同じだよね^^;)。・・・で、以降はこれを1つ1つ検証していく内容になります。
見返りが金、という闇なら倫理や道徳で対抗もできるが、臨床結果が歪められている場合は、それを事実と誤認してしまうため本人には何の悪意も我欲もなかったとしても、災厄に加担してしまうこととなる(医薬品の世界に限った話ではないですよね)。
データ改ざんについて
臨床試験のデータは、改ざんされている。
また製薬会社に不都合なデータは、
抹消されている。
製薬会社が資金を提供した臨床試験は、そうでない(政府の資金援助を受けた)臨床試験よりも、良い結果をもたらす傾向がある。2010年、ハーバード大の研究者が調べた500の臨床試験のうち、業界の支援を受けた試験の85%が肯定的で、そうでない試験の50%が肯定的であった。また、2007年、192件の臨床試験のうち、業界の支援を受けた試験は、そうでない試験の20倍肯定的であった。更に、2006年、542件の試験結果を調べた場合、業界の支援を受けた試験は78%が肯定的で、そうでない試験は48%が肯定的であった。この他にも、同じような結果になる調査が多々ある。
【公表されている臨床試験のうち90%は製薬会社が資金提供している】
(解りやすくいうと、金を出して都合よく結果を操作してますよってこと)
また、製薬会社は自社に不都合な臨床結果を抹消している(都合の良い臨床結果だけを公表している)。その実例が、レボキセチンという(ファイザー社の)有名な抗鬱剤だ。上記のように改ざんされた臨床試験の結果で、実際は効き目のない薬だが、さも効き目があるかのように結果を書き換えていた(この危険性は、説明するまでもないが、製薬会社に都合が悪いため隠蔽された検査結果で患者の身体に重大な危険を及ぼすものがあったとしても、それは(隠蔽されているため)そのまま市場(つまり我々)に投薬される。リアルな実験体になるのは、我々なのだ!!!)。患者は勿論、医者もまた自分が患者に投与している薬の本当の効果を知らない(情報源のほとんどが隠蔽体質のある製薬業界だから)。
レボキセチンのワード検索で上位表示されるサイト。本書とは無関係。
2008年、研究者は1987年から2004年にかけて市場に出た抗うつ薬の臨床試験結果を調査(食品医薬品局FDAを調査)した。探し出した74件の臨床試験のうち、38件は肯定的な結果(つまり薬が効く)、37件は否定的な結果であった。次に、その臨床結果のうち、公表されているもの(医者や患者が目にすることができるもの)を調べると、肯定的な38件の結果のうち、37件が公表されていたが、否定的な結果の37件のうちで公表されていたのは3件のみであった(残りの22件はなかったものとして闇に葬られ、11件は肯定的な結果として公表(つまり捏造)されていた)。
2001年から2002年にかけ、99点の薬の販売申請とともに提出された臨床試験909件のうち、肯定的な結果が出た試験は66%発表され、そうでない試験は36%しか発表されなかった。
2003年、5点の抗うつ薬の臨床試験43件のうち、肯定的な結果が出た試験は21件はすべて発表され、そうでない試験のうちの19%は公表されなかった。
2008年に於いてもまた、肯定的な結果の臨床試験はそうでないものに比べ4倍発表される確率が高かった。またそのうち(否定的な結果の試験)の何割かは肯定的な結果に書き換えられた上で学術文献に発表されていた。
このような事例は他にも膨大にある。
要するに(金儲けの為に)やりたい放題なのだ。
製薬業界の資金支援を受けた臨床試験に携わる大学や研究機関の研究者たちは、出資者の許可を得ずに臨床試験のデータを公表、議論、分析してはならない、という契約書に署名させられる。この時点で彼らは製薬会社に首輪を付けられた犬でしかない。また資金援助者(企業)は多くの場合、研究(臨床試験)を監視でき、その研究課程の如何によって、研究を中止させたり続行させたりできる権限を持っている(解りやすく言うなら、大株主と会社の社員くらいの力関係ですね)。となれば、会社にとって好ましくないような結果が出そうな研究はその途中で価値なしと判断され打ち切られていることになる。
対策は一応なされてはきた。
2007年FDA改正法が可決された。新たな臨床試験、市販薬の登録掲載を義務付ける法案だ。しかし、我々が現在使っているほとんどの薬は2007年以前に出来たものだ。そして2012年の時点で臨床試験のうち5件に1件しかこの法律を遵守していないことが明らかにされ、法令府順守の罰金も設定されているものの、徴収されたことがない(徴収されたとしても巨大製薬会社からしたら大した額ではない)。ザルだったのだ。
これまでの記述を見るに、
巨悪に加担するもの=大学、研究機関、規制機関、報道機関(仲間だとまでは言わないが目を瞑っているケースが多い)
犠牲者=医者(製薬会社の意図するまま薬を処方する傀儡)
本当の意味での犠牲者=患者(我々)
という図式が見えてくる。
規制機関と臨床試験の闇
主な規制機関
EMA(欧州医薬品庁)
規制機関の仕事は単純で、薬が効く(過去薬ではなくプラセボ比較)ことを示す臨床試験を見た後、最初にそれを承認する。薬が市場に出たらその安全性を監視する。危険性を有害性を医者に伝える。そして安全でなく効果のない薬を市場から除外する。
しかしここに、業界からの圧力、政府からの圧力、資金調達問題、組織内の利益相反などが介在してくる。
企業からのロビー活動は戦略的である。その分野の第一人者を探し出し、その人物と懇意になる。顧問、相談役として雇ったり、研究助成金を与えるのだ。また、規制機関と製薬会社のあいだで、自由な職員の移動がある。政府の規制当局者の給与は残念ながらあまり良くない。なので、金を餌に付け込まれやすいのだ。EMAの役員の多くは評議員二人も含めて、製薬会社から多額の資金援助を受けている。
医薬品安全局の科学医療担当次長デイヴィットグレアムは次のように語る。「FDAは業界の手先になっている。私は何度となく内部議会に出たが、企業が~をするつもりはない、と言ったとたんに、FDAは取り下げる。FDAが企業について語る口調は、我々の業界仲間、である」
薬は常に予期せぬ副作用とともに市場に出る。滅多にない副作用を見つけるためには大勢の患者のデータが必要だが、薬の認証を得るのに使われる臨床試験は、500~3000人程度であるからだ。加えて治験に参加する人は健康体である場合が多いが、実際の患者の中には、多種多様な疾患を抱えている人も多く、その疾患によっても薬の効果(副作用)は違ってくる。試験に悪結果をもたらしそうな者は治験に参加できない(応募の段階で弾かれる)。
2011年、アメリカ3000人を対象としたアンケートでは、39%がFDAは「きわめて有効な薬」だけを承認する、と信じていて、25%がFDAは「重大な副作用がない薬」だけを承認する、と信じていた。しかし、事実は違う。重大な副作用がある場合や、効果がはっきりとしない薬も、たびたび承認されているのだ。
どのように薬を承認するか、そして安全性を監視するのか、について非常に大きな問題を抱えている。現実は、お粗末な、既存薬に勝る有効性もない、時には有効性自体がない薬でさえ(企業圧力・企業の金儲けを優先させ)承認されているのだ。
患者の安全を直に脅かす結果
となって現れるが、
患者を第一に考えていれば
当然行われないこと、であり、
その信念のもとに行われるのであれば、
避けられる事態だ。
マーケティングの闇
著者は言う。
我々が神のように思っている『医者』のほとんどは言うほどの知識を備えていない。医療は常に進化し続け、その先端を追うためのは膨大な量の学術書を読まなければいけないが、そういった学術書を読むことを専門にしている学者ならまだしも、日常業務を行っているほとんどの医師にそれは不可能だ(一か月間に発表された一般診療にかかわる学術書をすべて読むだけで600時間が必要とされる)。よって医師の知識は、かつて(人によっては大昔)大学で学んだこと、医者仲間が言っていること、たまたま読んだ論文で目にしたこと、たまたま参加した勉強会で覚えたこと、これまでの診察で培ってきたこと、そして製薬会社の医薬情報担当者から得たこと……この程度の知識なのだ。
そしてそのなかでも強い情報源である医薬情報担当者は、専門家……ではなく、『自社の薬品を如何にして多く売るか』を目的とする(そのためには何でもやる)、営業マンなのである(また論文や勉強会などの情報も製薬会社が操作することは可能(金さえ握っていれば)。医師は個別の薬品について、その薬品の詳細な臨床結果を隅々まで検証することはない。時間的に不可能だからだ。
我々患者が考えるよりもずっと
微妙な知識で、
我々患者が考えるよりもずっと
適当に処方している。
例として、アトルバスタチン薬とシムバスタチン薬は同じ効果だが、無意味に高額なアトルバスタチンの方が多く売られている。我々患者は製薬会社が儲けるために無意味に高い金を払っている。
医師の教育には国がお金を出すことが好ましいが(公共の価値なので)、国は金を出し渋るため、代わりに製薬会社が金を出し、医師を教育する。こうなると当然製薬会社は自社の商品を売り込むよう医師を教育する(お医者様はさながら末端の営業マンだ)。医師も臨床試験結果を見るだろうが、何度も述べた通り、その臨床試験結果は既に製薬会社にとって都合の良い状態の代物として出来あがっている。
製薬会社は「製品の関心を高める」とか「医者の判断を助ける」とかいう美辞麗句をもとに、医学雑誌に新しい治療法の広告を打つ。効能を声高に謳う一方で、リスクにはあまり触れず、好ましくない比較からは目を逸らす(まるでアフィリエイターみたいだね^^)。そして医師と懇意になり、そのために食事会を設け、贈り物をする。
なぜアフィリエイターはアフィカスなのか?
1.売る為に情報の湾曲、隠蔽を行う(メリットは激押し、デメリットは控えめ、また酷い場合は書かない
2.1の売る為だけに作られた情報が検索上位を席捲し、ネットの景色が金儲け一色になる(本来その検索ワードで表示されるべき情報が表示されなくなる
— くろやぎ (@semirita1000) July 11, 2021
製薬会社は講演、チュートリアル、教材、カンファレンスなどの代金を負担し、その内容を自社の商売に有効なものへと繋げる。またプロのライターを雇って自社商品に有利な学術論文を書かせ、そこに名を関する学者を見つける、という行為もやっている。学術雑誌にお金を出し、学術論文を受け入れさせるのだ。こうしたマーケティング費は、研究開発費の約二倍に上る。アメリカだけでも600億ドルものお金がマーケティング費に使われ、そのお金はもちろん、我々患者が払った代金、公的機関からの支援金、また医療保険会社に患者が支払った掛け金、が原資となっている。
製薬会社が「宣伝」を行っているのは、医者だけでなく、患者もである。例えば適応障害のように「こういう病気がある」そして「あなたはこの病気かもしれない」という宣伝(マインドコントロール)を社会に流し、多くの気の病む患者を適応障害へと導き、医師の前で自らそう訴えさせ、目的である薬の販売へと繋げるマーケティングだ。
製薬会社のマーケティングの例として、マーケティングしやすい(解釈次第でどうとでもなる病気)、心の病気について取り上げる。
鬱病は脳のセロトニンが低いため、とされていて、皆がそう口を揃える。そして抗うつ薬は「選択的セロトニン再取り込み阻害薬SSRI」つまり、セロトニンを上げる薬なので、抗うつ薬はうつ病に効く、と認識している。しかし、これは間違いである。実に効果的なマーケティングの結果、このような事態になってしまっているだけなのだ。
GSK社の広告はこう謳う。「毎日うつ症状を二週間感じたら、鬱病かもしれません。パロキセチン(GSKの抗うつ薬)を買いましょう」ファイザー社は「ゾロフト(ファイザーの抗うつ薬)は脳のセロトニンの不均衡を正します」と宣伝する。鬱病、社会不安障害などの病気を作り、自分たちの製品を売りつける顧客を作る。実際、1999年、パロキセチン(抗うつ薬)の広告にGSK社は9000万ドル(90億円)の金を注ぎ込んだ。
医薬情報担当者は医者に接待をする。豪華なホテルや食事会に誘う、あからさまなやり方だ。医者は素晴らしいもてなしに感動し、酔って薬(ビジネス)の話をする。その内情はほとんど外部(世間)には漏れない。誰も漏らさないからだ。私自身、製薬会社の医薬情報担当者は医者の機嫌をへつらうようなイメージがあったが、実際は違うようだ。彼等からすれば医師は世間知らずの頭でっかちであり、マーケティングに嵌めやすい、簡単な相手であることが多い。リア充タイプの医師には上記のような友達感覚で打ち解けるし、知識オタクタイプの医師なら堅い臨床結果のみを持って接する。そうすれば信じてもらえるのだ。また彼らは、医者が医大生の頃からコンタクトを試み、繋がりを作ろうとする。
自社が売りたい薬に都合がよい臨床試験結果を医者に渡し、医者を洗脳する。・・・医者は医薬情報担当者に、反論しないのか? 疑わないのか? 残念ながら競合他社から既に別の洗脳を受けていない限り、医者個人から学術的な反論を受けたことはないという。越野のディフェンス並みのチョロさであるらしい。私も病気して医師に掛かり続けているが、なんだか、知識的にも常に頼りなさを感じている。
アメリカでは、患者の処方データが薬局から製薬会社に売られている(医者だけでなく、薬剤師にも営業マンは会いに行く)。この情報を利用し、企業は医者がどんな薬の処方をしているのかを知り、それを使って自社製品の売り込みをかける。
医者はどう製薬会社に対応すべきか?についても書かれている。
2.病院への医薬情報担当者の立ち入りを禁ずる
3.大学への医薬情報担当者の立ち入りを禁ずる
4.医薬情報担当者が、診察に与える影響力について、医者、医学生に教育を行う。
(これをしなければ、教育する立場に製薬会社がなってしまうため、容易く医者はコントロールされる)
医薬情報担当者(MR)=ヤバイ存在、って言ってるようなモン
学術雑誌もまた製薬会社の意のままとなっている。研究者や医師が独自の研究に基づき書いたと思いがちだが、実際は製薬会社子飼いの人間、また金で雇われたプロのライターが執筆し、名前だけ学者名を借りて信用力を得ている(名前を借りた学者には製薬会社から謝礼(金)が渡される)。
正直、製薬会社が金の為になんでもやるのは解っていた(そもそもそれが企業の本質なので)が、ここまでやりたい放題になっていることに関してはびっくりした。
先述したように、薬学には2つの大きな問題があり、1つめが臨床試験結果のデータ改ざん・隠蔽である。2つめがやりすぎ気味のマーケティングだ。ただし後者は前者に比べて見えやすく、法の対処(GSK社は2012年、違法販売促進(医者に賄賂を贈ったり、薬の情報を隠蔽し、偽っていた)で民事・刑事詐欺罪で30億ドルの罰金を科せられた)や、医者や大学の倫理観で対抗することも可能である(出来てはいないけど)。
しかし、前者の臨床データの改ざんに関しては、最初から必要(公的に有用)なデータがなかったことにされるため、仮に善良な医師がいたとしても、その医師すらも騙されるしかなくなる(なぜなら、製薬会社に都合が良い(金儲けのための)データしか存在していない為、患者にとって本当に有効な治療が最初の最初から不可能にされている)。現場で最善の治療を試みようとも、その最善が既に悪質なのだ。
よって筆者は、データ改ざん・隠蔽の問題の方を重く見ている。
イーライリリー社は2009年、総合失調症薬オランザピンの適応外使用販売促進に関し14億ドルの罰金を科せられた。ファイザー社は鎮痛薬、のちに安全性に問題ありとして市場から回収されたベクストラの危険な過剰投与に関し、23億ドルの罰金を科せられた。アボット社は2012年、高齢者の攻撃性を抑制するとしたデパコートの違法販売促進で15億ドルの罰金を科せられた。メルク社は2011年に1億ドル、アストラゼネカ社は2010年に5億2000万ドルの罰金を科せられている。